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創業メンバーが新規メンバーの陰口・事実無根な噂話をするとき、労務担当者のあなたはどうするか

創業メンバーは、創業初期に加入している社員のことです。とても厳しい環境を乗り切って事業を立ち上げているので、社長から信頼もあつく、自負もあります。

新規メンバーは、軌道に乗った後に加入したメンバーで、とても優秀で、ハイキャリアな方も多いかもしれません。

創業メンバー、新規メンバーにどんな人が集まるのかは、会社によってバラバラなので、本記事の内容は必ずしも適用できないリスクがあることを前提としたいです。

モデルケースとして

創業メンバーの一人が、会社の立ち上げ期に大きく貢献したものの、会社が急成長して、メンバーも大幅に増えて、フェーズの変化に少し取り残されている感があり、本人もそれについて焦りがあったとします。
新規で入社したメンバーが活躍する様子を見て、少し嫉妬にも似た反応があったとします。その感覚の延長で、恨み節的に出た一言、とった揚げ足、適応スピードの遅れに対する指摘。そういったものが積み重なって、なんとなく無理やりなネガティブキャンペーンを始めてしまったとします。

そういったことを直接的にしろ、間接的にしろ労務担当者は把握することになります。

中には「そんな状況になってるなんて、労務担当者はダメじゃないか」と仰る方がいるかもしれません。もちろん予防ができればいいですが、人間が増えればそれだけ問題が発生する確率は高まり、すべてを予防することはできません。

それを素早く把握できていることこそが、労務担当者がちゃんと社内で機能している証拠だと思いますので。

この論点は、現在運用させていただいてる「労務担当者なら誰でも参加可能なslackオープンコミュニティー」で例題として共有された事例です。

どこの会社の実話というわけではなく、妄想上の課題です。が、労務担当者の皆さんから出てきた妄想は、えげつないほどリアルです。なぜなら労務管理は常に現場で起こっていることだから、そしてそれを直視し続けてきた労務担当者の方の妄想だから。


対策の手順をデザインしよう

この手の人間関係の対立問題は、100人いれば100通りの対策が必要ですが、ある程度方針はあっても良いかなと思います。

まず、今回の論点スコープは、「創業メンバーの一人が、新規メンバーの陰口・事実無根なネガティブな噂話を流布している」という事象です。

本記事では、この論点についてどのような手順で対策を進めていき、解決とはどのような状況なのかを整理して共有できればと考えています。

(1)事実確認・証拠整理

まずやるべきことは、事実確認です。
論点スコープの「創業メンバーの一人が、新規メンバーの陰口・事実無根なネガティブな噂話を流布している」を要素ごとに分解して、事実を整理していくことが大切です。

▼創業メンバーの一人
- 創業メンバーの一人とは誰か?
- 本当に一人だけか?
- 創業メンバーと断定しているが本当にそうか?
▼新規メンバー
- 新規メンバーとは誰のことか?一人か?複数か?
- 本当に新規メンバーか?
▼陰口・事実無根なネガティブな噂話
- どんな話をしていたいのか
- 本当に陰口か、生産性のある指導ではないのか?
- 事実無根というのは本当か?
▼流布している
- 誰が誰に話しているのか
- どのような伝え方だったのか
- 相談しているだけではないのか?

これらの証拠を集めていくことは重要だと思います。場合によっては当事者それぞれから個別に聞き取りを実施することも必要です。

問題の本質を見誤ると、組織のために懸命に働いている人が離職するリスクすらありますし、このあと企画する対策が無意味なものとなってしまう可能性があります。

まずは明確に事実 / 証拠を集めていきます。

(2)被害範囲・深さ調査

次に被害範囲・深さを調査していきます。
(1)事実確認・証拠整理の中で、指導レベルを超えて、悪質な噂話を展開していたという事実があるならば、それにより噂話の対象となった本人がどのような被害を受けているかを調査します。

▼本人の被害範囲・深さ
- 会社に出社できないほど精神的にダメージを受けている
- 士気が下がり、モチベーションが著しく低下している
- 嘘の噂で周りに誤解されないか少し心配している
- 創業メンバーとの信頼関係が崩壊している

また、本人だけではなく、周りの社員の被害範囲・深さも調査すべきです。

▼周りの社員の被害範囲・深さ
- 会社全体が士気が下がって、モチベーションが低下している
- 今回の論点をきっかけとした離職社員が出始めている
- 社員間で信頼関係が失われたものが出始めている

被害の状況に応じて、早急な対応が必要か、少し様子を見るのかを調整することは必要です。


(3)程度に応じ役員等に頭出し

創業メンバーは、会社においてとても重要な存在です。

大変な時期を乗り越えて、会社に貢献しており、社長・役員とも連携ができています。そのため、いきなり何か対策を打つのではなく、創業時からいる役員などに一度頭出しておくことが重要です。

確認した事実・被害状況を踏まえて、役員に伝達して、どのような対策を行うべきかを協議していって良いと思います。

また、相談相手の役員が自ら対策を企画して実行に向けて動いてくれる場合もありますが、役員が人間関係のトラブルの経験が豊富な人ばかりではないと思うので、

事前に対策案を3案ほど用意して、メリット・デメリットを精査・明記した上で、その中から労務担当者として実行すべきと思う1案を理由とともに準備しておくことも重要です。

▼1.諭旨退職として退職をしてもらう
メリット:問題となった社員と話しあった上で退職してもらうので、問題となっている状況をリセットできる可能性が高く、社内のメンバーも士気が上がる
デメリット:退職してもらうために、反省した上で、退職届を提出してもらう必要があり、また創業から支えてくれたメンバーがいなくなってしまう
▼2.減給処分を実施する
メリット:創業から支えてくれたメンバーがいなくなるわけではない
デメリット:士気が落ちている社員からすると、問題社員とずっと関わっていく必要があるので、継続的で長期的なケアが必要
▼3.役員から厳重注意する
メリット:創業から支えてくれたメンバーがいなくなるわけではない
デメリット:士気が落ちている社員からすると、問題社員とずっと関わっていく必要があるので、継続的で長期的なケアが必要
労務担当者としては「1.諭旨退職として退職をしてもらう」を推します。
理由としては、被害状況を鑑みると、もはや信頼関係が崩壊しており、周りの社員でも退職者が出ています。
また弊社のValueは、「チームで結果を出すことにこだわろう」です。一緒に働くべき人、評価されるべき人は、Valueによって決めるべきであり、もっともValueに背いてしまった上、本人と話した結果として反省は全くない以上、厳しく対処すべきかと思います。

などの提案を整理していくことで、役員が検討しやすくすることも重要です。また、事実確認が明確に実行できている場合、所轄の労基署に連絡してどの処分が妥当か相談することも可能ですので、活用してもいいと思います。


(4)役員対応に応じ、労務担当が間に入ってアプローチ

役員との協議の結果、何らかの対応が行われたり、実際には行われなかったりするでしょう。そして、どちらにせよ労務担当者はそれぞれの立場にも近づいて傾聴する必要があります

問題を起こしてしまった社員の反省状況を傾聴して、今後の対応も傾聴して、とにかく傾聴を軸にどうしたいかを一緒に言語化していくことが対策の一つになるでしょう。

必ずしも反省しているとは限りませんので、実際には傾聴した結果、「相手方にも落ち度があるよ」という主張が行われることもあります。

逆にネガティブキャンペーンをされた側の社員についてもどのような感情なのか、どうすれば良いと思うかを傾聴して、一緒に言語化していくことが対策の一つになるでしょう。

ここで丁寧に傾聴して、お互いに歩み寄りを実現できれば、この段階で問題の状況が改善して、経過を見守るという対策に移行することもあると思います。

(5)解決度に応じ役員等再度巻き込み

再度役員を巻き込んでおくべきでしょう。
実際に労務担当者としてそれぞれ個別に傾聴した結果を共有します。
状況に改善が見られそうなのか、それとも修復は不可能なのか。

役員側でその状況を受けて、対策を企画・実行してくれる場合も当然あります。先ほどと同じくその後の対策案も準備しておくことで、スムーズに問題解決を実行できる可能性が高まりますので、準備は必須です。

(6)解雇等のペナルティ実行検討

ここで意思決定者・社長などを含めて、ペナルティー・対策を実行することを検討します。ペナルティー・対策案は複数あると思いますので、それぞれについて下記などを整理します。

- 実施するペナルティーの流れ
- ペナルティー実施の際の役割分担
- 法的な論点の整理
- 期待する効果
- 想定しえるリスクと対応

誰が、問題社員にペナルティを伝達するかもあらかじめてしっかりと決めておかないと、ずるずると予定が後ろ倒しになる可能性もあります。
ここできちっと対策を定義しておきましょう。

(7)対策ごとのメリットデメリット協議

ペナルティ・対策ごとにメリット・デメリットを最終確認します。
あえて、2段階に分けて慎重に行うことをオススメします。

人に罰則的なペナルティを与えるというのは、理由と程度が論理的でなければ納得感がなく、社内全体にマイナスの影響も起こりうるので、とにかく言語化していくことが大切です。
過去、現在、未来の社員のためにも、手を抜かずしっかりと言語化して、対策を吟味します。

(8)対策選択、実行

吟味した対策の中で、選択を行います。
決定したら、なるべく早く対策を実行していきます。


(9)効果測定、リスク顕在性調査

実行した対策・ペナルティによる問題の解決状況・改善状況を定点観測していきます。聞き取り、観察、アンケートなど様々な手法で状況の変化を整理していきます。

また、対策実行にも関わらず残っているリスク・懸念点があれば早めに役員も含めた意思決定メンバーに共有することが重要です。人間関係の問題は、当初想定した対策の効果が発揮されず、思いもよらぬ方向に進んでしまうこともあるはずなので、効果測定とリスクの調査が必要です。

(10)過程を精査して、予防/対策に生かす

ある程度問題が落ち着きはじめてから、大事な仕事があります。
それは、本質的な原因を社内で言語化・共有することです。

- 本質的な問題の原因は何か
- 問題の原因の解決に向けてどのような投資を行うか
- また同様の問題が起きてしまった時に、適用するプロセスの改善点の整理

ここで、今回起きてしまった問題を「組織の成長の糧として刻む」か「ただ嫌な事件だったとして忘却する」か、そこが労務担当者のクオリティに差がついていくことになると信じています。


まとめ

以上が今回の論点で実行する手順の一つのアイデアです。

状況、人間、カルチャーなども会社によって全然違うので、それぞれがこの方針をカスタマイズして、活用していくべきだと思います。

しかし、本来オープンにして協議することが難しいお題を徹底的にオープンにして共有することが、労務領域には必要だと思いますので、今後も発信をしてまいります。

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