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労務担当者に知ってもらいたい会計チームの頭の中【最後に話脱線】

あなたが労務管理のエキスパートなら、そのそばに会計・財務のエキスパートがいるだろう(あるいはいて欲しい)。

私自身、かつて監査法人で会計周りの経験を積んで、今は労務管理システムの開発をしているので、その2つの領域の美しさと儚さに魅了されている人間の一人である。

労務管理の実務を経験されてる方は同意してくれると思うのだが、「私は労務管理、完璧にできますよ。」と言う人は、おそらくそんなに実務をやっていないか、労務管理の定義がかなり狭いだけの話だろう。

たくさんの経験を重ねれば重ねるほど、この世界のアホほどの広大さと、ふざけたほどの深さ、そしてまだ見ぬ惑星のごとき答えのなさに打ちひしがれる。

例えば労務管理でいえば

- 労働関連法を全部読んで、覚えてて、実務に活用できるやつ弁護士・社労士でも銀河系にいない説
- 税法・保険関連法もかなり広く知らなきゃ、本質的なアドバイスをぬいぐるみにさえ伝えられない
- どこにも答えのない、1人ずつ異なる退職者・休職者・紛争社員とのコミュニケーション
- 変わるルール、守れぬ労基法、広がる働き方、現実に追いつかない法律、責任は労務に

どこまで走っても、果てしない先があることだけしかわからない。
それでいて、「ゼロディフェクト(不良品ゼロ)」が当然という期待値が要求される。

労務管理における期待ギャップを解消しない限り発展はない

労務管理は難易度と期待値のズレが異次元のレベルに到達している。これ以上、この話を続けるとタイトルと内容が異次元のレベルでずれそうなので、最後に「期待ギャップ」という会計士用語だけ紹介させていただき、次の話に進む。

「期待ギャップ」とは会計士なら全員学習している概念だが、

公認会計士が行う監査について、社会の期待と実際の業務内容との間に生じるギャップのこと。監査人の目的があくまで財務諸表が適切に表示されているかを保証することであるのに対し、世間は企業の不正を見抜き摘発することであると捉えていることをいう。

粉飾決算が発生した時に、「会計士は何を見てたんだ?」と炎上することがあるが、それは会計士が不正を見抜き摘発する仕事は一ミリもしてないし、目的も持ってないという事実を知らないから発生する事案である。

会計士試験を受ける際には、全員がこれを学習し、このギャップの改善が大切であるということを学んでいる。

ギャップの解消方法は、社会の要求に応えられるように不断の研鑽を続けるという方向と、社会側に会計士の役割をしっかり啓蒙するという両方が必要となる。

まだまだ会計士業界が期待ギャップを埋めきれているわけではないが、労務管理よりマシかなと思う。

何が言いたいかというと、期待ギャップとは労務管理に携わってきた諸先輩方および私を含めた現職の方々が、啓蒙の努力を怠ったことが原因の一つであるという点である。

この期待ギャップを解消することで、労務管理の難しさは理解され、多くの人材・予算が参入し、産業として発展していくことができるという仮説を早めに検証したい。


会計側の難しさ

話を元に戻すと同時に、会計側の話をしておくと、労務管理と同じレベルもしくはそれ以上の激しい広大さ、深さ、答えのなさと戦う必要がある戦場だということ。

そして高度な思考、計算能力が求められることもあれば、細かいオペレーション・精神的配慮を積み重ねていく必要があることも類似している。

- 構築したオペレーション通り全社員から毎月経費情報を回収、ミスを修正・フィックスまで流す
- 全てのビジネス取引のエビデンスを全て回収しきる、証憑書類がないやつをどうするか考えて作る
- 新しいビジネス取引の収益費用認識の判断基準の設計(ちょっと前ならゲーム事業で魔法石の収益認識タイミングとか、最近だと保有する仮想通貨の時価評価とか新しいの日々でてくる)
- IPO、ファイナンス、MA、ポストIPOのIRなど答えがないステークホルダーとのコミュニケーション

会計が何をやっているかを語弊を恐れずに大胆で一言で言うなら、

「会社の足跡を全て数字で言語化し、全てに伝え抜く」と言っちゃおうと思う。

会社の足跡とは、会社として行った全ての取引のことである。お金が実際に動いたところを記録するだけなら楽なのだが、それは江戸時代の会計処理で、

今時は「支配している経済的便益の源泉」の動きを「期間ごとに」言語化する必要がある。


わかりやすく言うと「数ヶ月後にお金払う義務ができた」「2年間の前払いで顧客に販売できた」とかも色々工夫して足跡として数字で言語化する。

全ての足跡を言語化するなんて、超大変なのは容易に想像できるだろう。それをやってるのが隣にいる(あるいはいてほしい)財務・経理のエキスパートの人。


「全てに伝え抜く」という表現には覚悟と責任を込めている

税務署、株主、投資家、社員など「過去・現在・未来」のステークホルダー全てに対して、会社の足跡を数値で伝え続けるという、財務・経理の人しか達成できない使命の尊さと重さをちゃんと理解している人はどれくらいいるのだろうか。

という感じで会計・財務という領域もまた尋常ならざる戦場であることを労務の方にも知ってもらいたい(すでに知ってる人が多いとは思うけど)。

労務が知っておくべき会計・経理チームの頭の中

労務チームが会計チームの頭の中を理解するために、知っておくべき概念体系がある。それは「概念フレームワーク」と呼ばれる。

概念フレームワークは、「そもそも収益ってどういう定義であるべきだっけ?」など概念としてのあり方を問い直した、言語化作業の結果生まれたものであり、哲学的でもある。

概念フレームワークは、企業会計(特に財務会計)の基礎にある前提や概念を体系化したものである。それは、会計基準の概念的な基礎を提供するものであり、それによって、会計基準に対する理解が深まり、その解釈についての予見可能性も高まるであろう。

会計の本質であり、細かい基準を全部暗記するよりも、理解を高めるためには重要なもの。全ての文章を100回ほど読み返して理解しておくと良いのだが、特に知ってほしいものを重点的に下記に説明しておく。

資産とは何か?

資産とは、過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源をいう

まず会計上の「資産」の生まれ方だが「資産」というものは「過去の取引・事象」によって生まれるものであるということ。

よって、「資産」自体は今より前のことをきっかけに生まれた概念であるということがわかる。

そして「報告主体」というのは、会社のこと

会社は自身の足跡を、ステーホルダーに報告していく義務があるため「報告主体」と言われる。

そして「支配している」というのは、メリットを享受できる状態にあることをいう。

最後に「経済的資源」とは、「キャッシュの獲得に貢献する便益の源泉」のこと

例えば、「建物」という固定資産を5,000,000円で購入したとする。
その取引は、「建物」を5,000,000円で購入することで、社員がそこで生き生きと仕事をすることで、「5,000,000円以上の価値を創出してくれる」というメリットがある状態になることを想定している。

つまりキャッシュの獲得に貢献する便益の源泉である「建物」から、メリットを享受できるようになっている(支配している)ので、資産として会計上で認識することになる。

若干回りくどい気もしたかもしれないが、資産ってなにかね?と言われれば
「資産とは、過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源をいう」となる。

ただ、会計チームが毎回このロジックで考えてるわけではない。会計チームは、こういった概念を体で覚えているので、わざわざ概念まで立戻らなくても会計処理を繰り出すことができる。あえて分解すると、本質的には先ほどの思考で考えてくことになる。

労務との絡みでいうと、例えば社員がお金がなくて、引っ越しができないなどの場合に、会社側で資金を貸付する場合。

このとき報告主体である会社は、「現預金」という資産を社員に渡して失ってる代わりに新しい「資産」を獲得している。このことがわかるようになれば、立派な会計エキスパートの第一歩である。

社員視点でいうと会社からお金を借りて、数ヶ月かけて給与天引きで返済していくことになる。

会社視点でいうと、数ヶ月間「キャッシュを獲得する」権利を獲得した状態になったと言える。

これは過去の取引によって、会社が獲得した「キャッシュを創出する資源」なので、「貸付金」という名前の「資産」として記録することになる。

つまり、社員に貸し付けをした時点で、会社側には「現預金」という資産が減少して、「貸付金」という「資産」が増えるという足跡ができるので、それを会計側では記録する必要がある。

また、会社視点ではこの後に1ヶ月、2ヶ月と時間が経過するごとに、社員から貸付金を回収して「現預金」という資産が増える一方で、「貸付金」という資産は減少していくことになる。

以上のことから、単純に社員に10万円を貸し付けるという取引をするだけでも、会計側は労務チームに対して下記のことを聞く必要がある。

- いくら貸した?(記録する金額を明確にするため)
- いつ貸した?(記録する日付を決めるため)
- 誰に貸した?(仕分を後から検証しやすくするため)
- 返済スケジュールは?(現金を増やし、貸付金を減少する記録をするため)
- 返済の予実管理(本当に返済したということがなければ記録できないため)
- 利子はある?(利子がある場合には、収益として認識する必要があるため)

さらにIPO/コンプライアンスなどをまともに考える会計チームであれば、承認フロー、稟議エビデンス、金額の上限下限ルール、悪用されないための内部統制構築などやることは腐る程増えるという別軸の仕事もあるがここでは割愛する。

まずは資産という概念について労務チームには本質を理解してほしい
細かい会計基準などを見てるほど労務担当者は暇ではない。概念を抑えてしまおう。

負債とは

次に「負債」という概念を知っておくべき。

負債とは、過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源を放棄もし くは引き渡す義務、またはその同等物をいう

先ほど資産をしっかり理解できれば、負債については簡単である。
シンプルにいうと、資産を放棄する・引き渡す義務のことを負債という。
「借入金」を考えればわかりやすいが、「現金」という「資産」を将来的に引き渡す義務なので、「負債」という項目として会計側では記録することになる。

この「負債」は実は労務側ではほぼ毎月触っているので、理解しておくと会計側のことを思いやれるようになるだろう。

例えば、当月末締 / 翌月25日払の会社を想像してほしい。
当月末締というのは、毎月月末の日をもって、1ヶ月分の給与金額が概念としては確定するというルールである。
もちろん勤怠集計、人事異動発令情報整理、法改正など様々な変数整理を労務側がしないとならないので、毎月月末の0時ジャストに給与額を計算することはできないので、あくまで概念として。

よって数日かけて、勤怠を締めて、給与を仮計算して、タブルチェックなどを経て確定して、その後社員からの報告により取り込み漏れの事象があれば給与に反映して、最終的に振込準備をするという流れだ。

これと同時に会計側も全力で記録を進めなければならない

月次決算を超しっかり行う場合、月末時点の会計実態を正しく処理すると負債が発生していることがわかるだろうか

月末時点では、会社は社員に対して「現預金」を支払う義務が確定しているが、実際に払うのは来月の25日となっている。

つまり月末時点では資産を放棄する・引き渡す義務が発生しているのである。よって社員に「現預金」という「資産」を将来的に引き渡す義務として「未払給与」という負債を記録する必要がある。

月次決算も早めに確定しなければ、迅速な意思決定に活用することができないために、会計チームは労務チームに対して、「早めに給与情報ください」となる構造。

ちなみに、勘のいい労務担当者であればわかるだろうが下記はそれぞれ負債として認識するので、会計チームは別々に記録している。

- 「所得税」(徴収月の翌月10日払というルールなので会社は「預り金」という名目で負債認識)
- 「住民税」(徴収月の翌月10日払というルールなので会社は「預り金」という名目で負債認識)
- 「健康保険料(本人負担分)」(原則は対象月の翌月末納付というルールなので会社は「預り金」という名目で負債認識)
- 「健康保険料(会社負担分)」(原則は対象月の翌月末納付というルールなので会社は「未払金」という名目で負債認識)
- 「厚生年金保険料(本人負担分)」(原則は対象月の翌月末納付というルールなので会社は「預り金」という名目で負債認識)
- 「厚生年金保険料(会社負担分)」(原則は対象月の翌月末納付というルールなので会社は「未払金」という名目で負債認識)
- 「雇用保険料(本人負担分)」(年1納付なので、基本会社は「預り金」という名目で負債認識)
- 「雇用保険料(会社負担分)」(年1納付なので、基本会社は「未払金」という名目で負債認識)

とてもややこしいことに、上記仕訳ルールは一つのパターンを示したに過ぎず、会社によって仕訳の方法はいろいろなので、オペレーションもそれに合わせて変える必要がある。

多くの会社では、会計上では実態として月末に毎月負債は発生しているので、会計チームとしては正確に足跡を記録するために、これらの情報を全力で取りに来るということである。

費用とは?

最後に「費用」という会計上の概念を説明しておく。

費用とは、純利益または少数株主損益を減少させる項目であり、特定期間の期末までに生じた資産の減少や負債の増加に見合う額のうち、投資のリスクから解放された部分である。費用は、投資によりキャッシュを獲得するために費やされた(犠牲にされた)投入要素に見合う会計上の尺度である。投入要素に投下された資金は、キャッシュが獲得されたとき、または、もはやキャッシュ を獲得できないと判断されたときに、その役割を終えて消滅し、投資のリスクから解放される。費用は、そのように投下資金が投資のリスクから解放されたときに把握される。 費用についても、投入要素の取得に要するキャッシュ・アウトフローとの関係が重視される。そ うしたキャッシュ・アウトフローについては、投資のリスクからの解放に基づいて、費用としての 期間帰属を決める必要がある。

本来ならば全ての文章を精緻に解説していきたいところだが、労務担当者としては全部を知るのは逆に過剰と言えるため、重要なところだけ説明する。

要するに、費用とは「特定期間の期末までに生じた資産の減少や負債の増加に見合う額のうち、投資のリスクから解放された部分」のことであり、「投資のリスクからの解放に基づいて、費用としての期間帰属を決める必要がある」ものだ。

この文章で最も重要なのは「投資のリスク解放」という概念の理解である。
これの定義を率直に言語化すると「投資したことによる成果が確定した状態」のこと。

利潤を追求する企業である以上、いかなる投資も投資額以上に成果が見込めることを予定して実行しているという前提で会計は作られている。

よって、ラクスルでA4チラシを発注するときも、ごちクルでケータリングのご飯を発注するときも投資額以上に成果が見込めることを予定して実行している。

ただし投資は全てリスクにさらされている。投資した結果、成果が出るか出ないかは不確実であるという意味のリスク

予定通りに成果が見込めたとき、または予定に反して成果が見込めなかったとき、そのどちらの場合も「投資の結果はどうなるかな?」という不確実性は消え去り、成果がでた・出なかったという結果が確定する。その意味で持って、投資のリスクから解放された状態になったと言えるのである。

つまり費用とは「資産の減少・負債の増加のうち、投資のリスクから解放されたもの」のことで、わかりやすく例を出すと

イベントで参加者に振る舞うケータリングは、発注してそのイベント参加者に食してもらうことにより満足度を高めるという成果を予定している。

しかし、実際に食べてもらうまでは、その成果は不確実性にさらされている。「満足してもらえるか?」「そもそもケータリングは本当に届くか?」などである。

しかし実際に食されたり、事故により届かないなどの事実が確定して、はじめて成果の不確実性は消え去る。

その瞬間にケータリング代金として支払った「現金預金」という資産が減少し、投資のリスクから解放されたとして「交際費・会議費」などの項目で費用として認識される。

「投資のリスクからの解放に基づいて、費用としての期間帰属を決める必要がある」という文言は、費用をどの期の費用にするのか自由だった場合には、粉飾・脱税がやり放題になってしまうので、投資のリスクから解放された期について費用認識をするというルールになっている。

会計上の費用は、労務業務の中でもとてもたくさん出てくるが、特に重要な2つの論点を整理して共有したい。

①毎月の給与計算

毎月社員に支払う給与を整理すると、

「収益」を獲得するための「労働力を提供してもらう」という成果を得るために「給与」という投資を行っていると考える。

よって社員の役務提供が完了した時点で投資リスクは解放され、法的にも「給与支払義務」は発生するため、支払いが来月だったとしても、支払い義務という「負債が増加」した時点で費用を認識する必要がある。

よって「未払給与」という負債を増加させて「給与賃金」という費用も同時に増加させるという取引として、会計チームは認識することになる。

重要なのは現金を支払ったものだけを記録するのではなく「現金を支払う義務」などまだ支払っていなくても、負債が確実に生じている状況でも認識をするというものであること。

②賞与計算

定期的に支払う賞与も労務と会計が連携する重要な部分である。下記のケースを想定する。

決算月:3月
賞与:年2回(6月と12月支給)
6月支給賞与は「12月〜5月」までの期間の勤務に対するもので、12月賞与は「6月〜11月」までの期間に対するもの。

この取引を具体的に言語化すると、6月支給「賞与」という投資は、12月〜5月により一層頑張って労働してもらうという「成果」を生み出すために、「現金預金」という資産を賞与として支払う義務であると言える。

つまり3月決算の時点で、12月〜3月の間に頑張って労働してもらうという成果は、すでに提供されており、不確実性から解放されているので、費用として認識するべきだということ。

だけど、「現預金」という資産を支払うのは6月なので、将来に「資産」を引き渡す義務として「負債」を認識すべきということになる。

3月末時点で支払予定額の6分の4の金額分(4ヶ月分はリスク解放されているので)に該当する「賞与引当金繰入額」という長い名前の費用を認識して、同時に「賞与引当金」という名前の負債を認識することが必要となる。

よって会計チームは賞与がまだ支払われなかったとしても、決算期などにおいて、

- いくらの賞与が支給される予定?(記録する費用・負債の金額を決めるため)
- 誰に賞与が支給される予定?(記録する費用・負債の検証を将来的にもやりやすくするため)
- いつ賞与が支給される予定(費用と負債の金額を決めるため)

これらの情報が必要となる。
もちろん賞与の計算設計、支給対象期間、考え方などによって会計処理は変化するので、それに合わせて必要な情報は変わってくる。

会計チームの頭の中の一部をみて

さぁどうだっただろうか。

実際には会計チームは、「資産は過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源だから、この場合は。。」などの思考を回している訳ではない。

なぜなら、
- そんな暇はないから
- 体が覚えていて、脊髄反射レベルで対応できるから

だけど、労務担当者が反射的対応できるまで会計を体に覚えさせる必要はないし、そんなことはできない。

なぜなら、労務管理はたくさんの経験を重ねれば重ねるほど、労務の世界のアホほどの広大さと、ふざけたほどの深さ、そしてまだ見ぬ惑星のごとき答えのなさに打ちひしがれるてるのだから。

そして会計もそれと同じくらい奥が深いので、二つの領域を完全にマスターできる生命体はこの銀河系にはいないと思う。

「いや、俺はできるよ」という人がいるとすれば、おそらくそんなに実務をやっていないか、労務管理の定義がかなり狭いだけの話だろう。

細かい会計基準を暗記するより原理原則となる概念を抑えることをオススメしてみたい。ただこの提案は一般的な方法ではなく、筆者が独自にオススメする方法である。

なぜなら通常概念フレームワークは、「会計を学問として深めに勉強した人」のみが通る道であり、実務バリバリで叩き上げの方はそんなものを読まないし、読む必要はないからだ。

なので、隣にいる会計のエキスパートに「概念フレームワークを読んだ方がいいですかね?」と聞いても「は?なにそれ?」「そんな暇あったら早く給与データ出せる仕組みづくりして欲しいです」となる可能性はあるだろう。

だが、あえてここで概念フレームワークを推奨したのには二つ理由がある。

一つは、会計実務をやらない人にとって、基準や処理を丸暗記するのは難しいし、楽しくないし、未来がないからだ。本質を理解することでのみ、お互いを真の意味で理解できる可能性がある。

枝葉の手続きやアウトプット部分を見ただけで、「労務のことを理解できたわ」と言われて嬉しい人はいないだろう。会計側もそれと同じ。

真の連携は本質を理解して、相手の苦労・難しさを知って、リスペクトをすることでしか成立しない。

こっちのことを知って欲しいなら、まず相手のことを知るべきだろう。

労務と会計が真の意味でリスペクトしあって、融合し、付加価値を共創できたとしたら。そう考えるだけでワクワクする。なぜなら双方が持っている情報は、その会社が歩んできた足跡と、その会社の信頼を司っているのだから。

これが会計の本質を整理した概念フレームワークを労務担当者が会計チームの頭の中を理解するための資料としてオススメした一つ目の理由である。

もう一つの理由は、労務産業の発展のため

概念フレームワークという会計側の言語体系をみて、労務側で「ちょっと待てよ」と思った方がいたら、察しが良すぎると言える。

そう。労務側には存在しないのだ

労働時間ってそもそもどうあるべきなんだっけ?
有給休暇ってそもそもどうあるべきなんだっけ?

そういった理想論を軸に法律を生み出していく作業を労務側はやっていない。だから、新しい働き方が生まれた時に、法律が追いつかない。

これを少し専門的にいうと、帰納的アプローチで構築したルールだけでは、未来の不確実性に耐えうるルールは作り得ないということ。

つまり現実に今発生している課題や現象を取り締まるために作ったルールは、状況が変化しないという前提の中では安定するが、そんな世界は存在しないので、混乱や不満が生まれ続けるということ。

労働基準法がもともと工場法という工場で働く労働者を対象としたルールだったことからも明らかだが、労働関連法は現実に見えている課題に対処するために帰納的アプローチで作られた体系であることがわかる。

それはそれで大切なのだが、一方で演繹法的アプローチで法律を改善するような概念を作っていくことで、理想と現実はコンバージェンス(収斂)することができる。

つまり、前提や目的を先に設定して、その目的に合うルールへと改善をしていくことが重要である。

労務管理の理想の考え方を誰かが整理して、発信して、現実を改善していかないとダメだということで、今後みなさんと一緒に作っていきたいと思っています。

また労務管理を取り巻くルールを、目的からきちんと捉え直すことができると、もっと素晴らしいメリットがまだ他にある。

それはルールに秩序が生まれ、理解しやすさ、メンテナンス性・可読性が高まること。

それによって、多くの人の意見を取り入れやすくなる。

それによって、大学で労務管理の研究をする人が増える。

それによって、面白い労務管理の研究が増える。

それによって、若い大学生などが労務管理に興味をもつ。

それによって、労務管理に若くて優秀な人材が増える。

それによって、労務管理から付加価値を生み出せる回数が増える。

それによって、労務管理に予算・人材が集まる。

それによって、労務管理にイノベーションが起こる土壌ができる。

それによって、さらに次の世代が労務管理に魅了される。。。。


期待ギャップを埋めるために、啓蒙すること。
それが、労務管理領域の発展のためにとても重要であるということを結びの言葉として、この自己中心的な文章体系を閉じたいと思う。

なお本文章は、わかりやすくないが、筆者的にはわかりやすさを重視して、簡便的に記載しているので、厳密にいうとみたいなところは結構あるので、ご注意ください。

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